神代記 須佐之男命
01 黄泉国から帰って来た伊邪那伎大神は、阿波岐原に到りまして、左の御目を洗ひたまふ時、成りし神の名は、天照大御神。次に右の御目洗ひたまふ時、成りし神の名は、月読命。次に御鼻を洗ひたまふ時、成りし神の名は、建速須佐之男命。 次に建速須佐之男命に詔りたまはく、「汝命は、海原を知らせ」と事依さしき。
02 大屋毘古神の詔命の随に、大穴牟遅神は須佐之男命の御所に参到れば、その女須勢理毘売)出で見て、目合して相婚ひまして、還り入りて、その父に白して言はく、「いと麗しき神来ましつ」とまをしき。ここにその大神出で見て告りたまはく、「こは葦原色許男命(アシハラシコヲノミコト)と謂ふぞ」とのりたまひて、すなはち喚び入れて、その蛇の室に寝しめたまひき。
03 須佐之男命、黄泉比良坂に追ひ至りて、遥に望け呼ばひて大穴牟遅神に謂りて曰はく、「その汝が持てる生大刀・生弓矢をもちて、汝が庶兄弟は坂の御尾に追ひ伏せ、また河の瀬に追ひ撥ひて、おれ大国主神となり、また宇都志国玉神となりて、その我が女須世理毘売を嫡妻として、宇迦の山の山本に、底つ石根に宮柱ふとしり、高天原に氷椽たかしりて居れ。この奴」とのりたまひき。