神話の誕生 此乃伴犬甘蔵吉人、三野国在牟毛津止云人乃児、犬黒比


1.天野大社(丹生都比売神社)の創建譚
 播磨国風土記逸文 神功皇后は爾保都比売命を紀伊国筒川の藤代の峯に鎮め奉った。
 神功皇后紀 阿豆那比の罪のお話に、小竹祝、天野祝を合葬して夜のように暗くなったとある。
 丹生祝氏本系帳
品田天皇(諡 応神)二柱に進つれる物、紀伊国の黒犬一伴、阿波遅国三原郡の白犬一伴。 御犬の口代に飯地を奉る、美乃の国の美津の加志波、波麻由布、飯盛る器と寄せ給ひき、 又此の伴の犬甘蔵吉人、三野国に在る別牟毛津と云う人の児犬黒比と云う人を寄せ奉る。 和歌山県海草郡長谷宮の川中に明神垂迹石といふあり。祝詞石とも言う。 長谷丹生神社「大黒人」

2.犬
犬は人類の最古の朋友。子犬を盗んできて馴れさせることから始まった。
不動尊は犬を連れている。不動明王を祀れば病犬や狂犬は村に入らない。
犬は修験道の行者を守ると云われる。
安曇犬養、海犬養など海人族に犬養が多い。魚、干魚を犬の飼料とした。
犬が湧き水に人間を案内する。犬が金の糞をひねり出す。ここほれワンワン。沖縄に多い話。
水と鉄との関係 褐鉄鉱(スズ)は水の中の草の根で生成 断層には金属と水 砂鉄
『播磨国風土記』讃容郡 鉄を発見した人は別部の犬という。別部は和気氏の部民?犬は人名

3.弱い兄と強い弟の三つの物語
1)火照の命(海幸彦)と火遠理の命(山幸彦)   海幸彦の子孫が隼人となる。狗人。
2)神八井耳の命と神沼河耳の命  神八井耳の命は多臣、阪合部連、伊勢の船木直の祖。
3)大碓命と小碓命(日本武尊)   大碓命の子の押黒の弟日子の王は牟宣都の君の祖

4.弱い兄の末裔はどうなったか。末裔は高野に向かう。
1)隼人 犬祖伝説の民(南アジア、宮古島)。宇智郡に阿陀比売神社。隼人の拠点。
宮古島 人間の妻を得た犬が船に乗せられて、漂着。うつぼ船型の伝説。
アイヌ 南方からやって来た女神を犬が洞窟に案内、夫婦となり、子をなした。

2)阪合部は宇智郡に地名が残り居住していたようだ。阪合部内に犬飼がある。多氏と同祖。
住吉大社神代記 紀伊國伊都郡丹生川上天手力男意氣績ゞ流住吉大神 →船木氏 多氏と同祖
『古代の鉄と神々:真弓常忠』船木氏は丹生川上よりも砂鉄の豊富な播磨へ移動と推定。
五條市犬飼町に転法輪寺が鎮座、空海と狩場明神とが出会った場所との伝承がある。

3)牟宣都の君とは三野国にいた氏族。備前か美濃か。
播磨国風土記  印南の別嬢南毘都麻島に隠れ、その白犬、島に向かって吠え、居場所が判り景行と結ばれて、大碓命と小碓命を生む。犬が牟宣都の祖?
景行二十七年紀 美濃国に弟彦公(大碓命の子)と云う弓の名人がいて日本武尊のお供をした。牟宣都はモノノフ
雄略七年紀 吉備弓削部虚空が吉備下道に留められたのを身毛君大夫を遣わした。モノノフか密偵か?
天武元年紀 村国連男依、和珥部臣君手、身気君広を召して美濃の多臣品治に告げよ。密偵的行動。
延喜式 牟義都首は井戸をさらい、若水を汲むという宮中年一度の「主水の祭事」を司る。



5.空海と高野山
  犬飼山転法輪寺  空海が留学先の唐から日本に向かって三鈷を投げ、落ちた所
を密教の修行場としようとした。三鈷の落ちた場所を探そうとし ていた所、当地で出
会ったのが、白と黒の犬をつれた猟師で あり、犬が空海を案内した。 後、猟師が亡
くなった際、空海は狩場明神と称えた。 かつらぎ町宮本に狩場明神の墓とされる
合野神社
がある。 狩場明神は高野山の地主神である高野御子神の化身とされる。
皮張明神とも言うが、フイゴに狸を皮を張ることからの命名。 狩り場明神は牟宣都
氏の人。吉野離宮の守備でもやっていたか。天武天皇につかえ 飛鳥か吉野などに
居住していたのではなかろうか。 丹生祝氏本系帳の説話は、空海の高野山入りの
件を利用して応神天皇の頃に持ち込んだ。 四方の境界をこうしたああしたともあり、
支配地争いが長く続いた。正面に丹生神社がたった。 空海は十年の借用書で高野
山を借りたが、十を千に書き換えたとか、様々。

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