Uga 言葉の呪力


1 万葉集の言霊の歌 

0894 神代より 言ひ伝て来(け)らく そらみつ 倭(やまと)の国は 皇神(すめか
み)の 厳(いつく)しき国 言霊(ことたま)の 幸(さき)はふ国と 語り継ぎ 言ひ継がひけり。
3254 磯城島の 大和の国は 言霊(ことたま)の 佐(たす)くる国ぞ 真福(まさき)くありこそ
2506 言霊(ことたま)を 八十(やそ)の衢(ちまた)に 夕占(ゆふけ)問ふ 占(うら)まさに告(の)れ 妹に逢はむよし

 言霊 言葉に宿っている不思議な霊威 古代、その力が働いて言葉通りの事象がもたされると信じられた。

 言霊信仰 祝詞 寿詞よごと 呪文 となえご 諺ことわざ 和歌 あいさつ語 言葉に出して言ったことが、それ自身独立の存在となり、現実を左右すると考えられた。

 名に対する禁忌の心持ちとも共通する信仰・感覚である。名を聞くのはプロポー ズ 本名を知られると、支配される。呪殺される。名を与えるのは、後継者とする。

言霊と神 言霊は神がいて初めて発揮される霊力とする考え方がある。言霊となる言葉をはっする際には、神を意識しているはず。アニミズムではないと言える。



2 言霊の神を祭る神社
 

事任八幡宮(ことのまま ) 静岡県掛川市 創立年代不詳。一説に成務天皇(84年〜190年)の御代の創立と伝え聞く。大同2年(807年)坂上田村麻呂東征の際、桓武天皇の勅を奉じ、旧社地 本宮山より現社地へ遷座すという。延喜式神名帳に(佐野郡)己等乃麻知(ことのまち)神社とあるはこの社なり。
御祭神 己等乃麻知比売命(ことのまちひめのみこと)中臣の祖である興台産命(こことむすびのみこと 己等乃麻知)の后神様です。興台産命は神への請願の言葉を司る神、即ち、祝詞の神であり、言霊の神とも言える。

氷川神社 埼玉県鳩ケ谷市 創立不詳、明治六年四月村社ニ列セラル。 
祭神】素盞嗚尊
石碑「神随言霊彦命」がある。言霊彦命の名はこの碑だけである。

子之神社 神奈川県足柄下郡 子授け、安産、初宮詣、縁結び、厄除、病気平癒、合格祈願等の諸祈祷執行。また、鈴木家伝来の“言霊命名方”により、赤ちゃんに縁起の良いお名前を授与します。
祭神 大己貴命


3 呪い 

神による呪い 高木神 天若日子にもし邪(キタナ)心あらば、天若日子この矢にまがれ」と云(ノ)りて云々。

天皇による呪い 神武天皇は、天香山(アマノカグヤマ)の埴土(ハニツチ=粘土質の土)を取って、八十平瓮(ヤソノヒラカ)を作り、自ら齋戒(モノイミ=血や死の穢れや女性に触れずに清らかな生活をすること)をして、諸々の神を祀りました。それで区宇(アメノシタ)を静めました(=安定させました)。

人間による呪詛 平群真鳥の塩への呪詛 仁賢天皇即位前に、大伴金村連が命じられて真鳥を殺した際、真鳥は、塩に呪いをかけた。この時、角鹿(ツヌガ=敦賀)の塩だけ呪いをかけることを忘れたので、天皇の食膳に使用された。


4 国讃 

舒明天皇の香具山に登りまして望国(くにみ)したまへる時にみよみませる御製歌(おほみうた)
0002 大和には 群山(むらやま)あれど とりよろふ 天(あめ)の香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙(けぶり)立ち立つ 海原は 鴎(かまめ)立ち立つ うまし国ぞ 蜻蛉島(あきつしま) 大和の国は
天香具山は神のいる山 国見儀礼は神を意識する。

 速須佐之男命、宮造るべき地(トコロ)を出雲国に求 (マ)ぎたまひき。ここに須賀(スガ)の地(トコロ)に到りまして詔(ノ)りたま はく、「吾(アレ)ここに来て、我が御心(ミココロ)すがすがし」とのりたまひ て、そこに宮を作りて坐(イマ)しき。故(カレ)、そこは今に須賀と云(イ)ふ。
八雲(ヤクモ)立つ 出雲(イヅモ)八重垣(ヤヘガキ) 妻(ツマ)籠(ゴ)みに 八重垣作る その八重垣を

国讃ができなかった例。
聖帝(ヒジリノミカド)の世(ミヨ)
ここに天皇(スメラミコト)、高山に登りて四方(ヨモ)の国を見て詔(ノ)りたま はく、「国中(クヌチ)に姻(ケブリ)発(タ)たず。国皆貧窮(マヅ)し。故(カ レ)、今より三年(ミトセ)に至るまで、悉(コトゴト)に人民(タミ)の課○<に んべんに「殳」>(エツキ)を除(ユル)せ」とのりたまひき。


歴代統治者の国讃 日本書紀

神武
天皇 「あぁ!!!良い国を得たものだ! 内木錦之眞?国(ウツユウノマサキクニ)ではあるが、蜻蛉(アキツ=トンボのこと)が繋がっているようでもあるなぁ」

伊弉諾尊 「日本(ヤマト)は心安らかな『浦安の国』だ。細い矛が沢山ある… 『細矛(クワシホコ)の千足(チダ)る国』だ。磯輪上秀眞国(シワカミホツマクニ)だ。」

大己貴大神 「玉牆内国(タマガキノウチツクニ)」と言いました。

饒速日命(ニギハヤヒノミコト)「虚空(ソラ)見つ日本(ヤマト)の国」と言いました。

以上

  参考書
『言霊と日本』樋口達郎 北樹出版
『言霊と日本語』今野真二 ちくま新書
『言霊とは何か』佐々木隆 中公新書

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