七夕 当麻と交野


大陸での七夕
『詩経』春秋戦国時代 七夕の詩歌
維天有漢 監亦有光 跂彼織女 終日七襄 雖則七襄 不成報章 皖彼牽牛 不以服箱
天の川に織女がいても現実には織物ができるでもなく、牽牛の牛に車を牽かせるわけにもいかない。



日本の古典

古語拾遺(日神の石窟幽居)
  
天羽槌雄神(倭文が遠祖なり)をして文布を織らしむ。天棚機姫神をして神衣を織らしむ。所謂和衣なり。

日本書紀
 神代紀第九段 
下照姫の歌「天(あま)なるや 弟棚機(おとたなばた)の頸(うな)がせる玉の御統(みすまる)、御統に 孔玉(あなだま)はや。み谷(たに) 二(ふた)わたらす阿遅志貴高日子根(あぢしきたかひこね)の神そ。」

 応神紀四十一年 阿知使主らが呉から筑紫に着いた。そのときに宗像大神が工女らをほしいといわれたので兄媛を大神に奉った。

 雄略紀十四年 身狭村主青らは、漢織、呉織、衣縫の兄媛・弟媛らを率いて、住吉の津に泊まった。・・衣縫の兄媛を大三輪神社に奉った。

 持統紀五年 秋七月、天皇、吉野宮に幸す。・・丙子(七日)に、公卿に宴(とよのあかり)したまう。

万葉集 たくさんある
 山上臣憶良 天の川相向き立ちて吾(あ)が恋ひし君来ますなり紐解き設(ま)けな
 湯原王   織女(たなばた)の袖纏(ま)く宵の暁(あかとき)は川瀬の鶴(たづ)は鳴かずともよし
 柿本人麿  久かたの天(あま)つしるしと水無川(みなしがは)隔てて置きし神代し恨めし
       天の川棚橋渡せ織女のい渡らさむに棚橋渡せ

続日本紀
 
聖武天皇天平六年 秋七月七日、天皇は相撲の技をご覧になった。この夕べ南苑に移って、文人に命じ七夕の詩を作らせられ・・

肥前国風土記
 
姫社の郷 山道川の西にあらぶる神がいた。そこで占うと「筑前国宗像郡の珂是古に祭らせよ」とでた。珂是古は幡を風にのせると姫社の社に落ち、再び山道川付近の田の村に落ちた。その夜の夢に織具が舞をしたので女神とわかった。



肥前国風土記にある媛社神社の由緒

鎮座 佐賀県鳥栖市姫方町 姫古曽神社
 
祭神 市杵嶋姫命 八幡大神 住吉大神 武内大神
 風土記に云う「幡を風にのせ」た場所とされる。

鎮座 福岡県小郡市大崎 媛社神社(七夕神社) 幡の行き着いた場所
 『平成データ』正式名を媛社(ひめこそ)神社と称し、媛社神と織姫神を祀った神社で、媛社神は別名を饒速日命といい、交通安全、織姫神は機織りにすぐれた技をもつ神と伝えられている。この神社は肥前国風土記に記載され、創建以来1200年以上で「星まつり」「乞功奠(きっこうてん)」の伝説が中国から伝わり、我国の「たなはたつめ」の信仰と結びつき、近くの宝満川を天の川になぞらえ、対岸の稲吉に犬飼神を祭神とする牽牛社が祀られていました。
 谷川健一『白鳥伝説』によれば、石鳥居の額には磐船神社と棚機神社の名が併記されており、祭神の織姫とは『旧事本紀』に云う饒速日命の母である栲幡千々姫命であろうとし、後世に七夕信仰と習合したものとされている。

七夕連関分析

七夕関連の図


物部と織物をつなぐもの
  『天孫本紀』饒速日命は天忍穂耳命と栲幡千々姫命を親とする。
  倭文連等の祖の伊佐布魂命は饒速日命天降りの際、防衛として供へ奉る。
  物部だけではないが、祭祀氏族としては神衣と御餞の制作は必須業務。
  姫社の社を祭った筑前国宗像郡の珂是古とは物部阿遅古(水間君の祖)のこと。水間君は宗像三女神を祭祀した氏族でもある。

宗像三女神、阿遅志貴高日子根、下照姫、ひめこそ神、天日矛。
  三女神の一柱である田心姫の子神が阿遅志貴高日子根と下照姫。「弟棚機の頸せる」と歌った歌謡の解釈はともかく、葛城の鴨氏に棚機の祭祀が伝えられていた証左であろう。棚機神社。これがやはり物部系の倭文氏にとりいれられて、葛木倭文坐天羽雷命神社の祭祀につながった。
  難波のヒメコソ神は下照姫、または赤留比賣神。比売許曽神社姫島神社
  赤留比賣神を追いかけた天日矛命は牛を牽いた者の赤玉を取り上げている。牽牛になったとも言える。
  天日矛の登場は織物で著名な秦氏との関連で七夕に関係するのは自然なこと。

交野と当麻をつなぐもの
  物部系氏族 交野物部、当麻物部は『旧事本紀』の「天物部等、二十五部人、同じく兵仗を泰びて天降り供へ奉る。」に名を連ねる。
  饒速日尊降臨の哮峯として、交野の磐船神社近辺、また当麻の二上山などが伝えられている。各物部にそれぞれ哮峯があったのかも知れない。
  曼陀羅で有名な当麻寺は聖徳太子の弟の麻呂子王が河内国交野に建てた万法蔵院が元寺との説がある。
  交野の獅子窟寺や当麻寺には役小角、空海にまつわる話が伝わっている。
  交野には濃厚な七夕伝説を示す地名や神社が鎮座している。織物神社八丁三所など。細屋神社も謎を秘めている。

七夕は”3”にまつわる。また和歌は言霊として神に奉じるもの。
  織女星の絵は山形をなす三星を頂いている。三隅なすとは一を聞いて十を知るの意。
  兄媛を奉じた宗像は三女神、大神神社は三輪。
  牽牛は三山冠をしているとか。
  交野の獅子窟寺から西を見ると山また山、三山。三山冠は彦星。
  交野の見所、八丁三所。
  空海は三鈷を投げた。
  北斗七星の柄部は三星。
  七夕の交野に多い住吉神は和歌の神でもあり、祭神は三筒男神。
  和歌の神は衣通姫 シースルーの上等な衣料、素登織姫。

鵜葺草史話
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